2022年1月4日、仕事初めの日の朝日新聞朝刊から、未来の働き方に関する興味深い記事が2つありましたので、ご紹介しましょう。AI、ロボット時代に対処する準備はできていますか?
仕事の未来はどうあるべきか?
先ず、ハーバード大学教授のマイケル・サンデル さんのインタビュー記事から。
コロナ禍の最初のころは、感染リスクを恐れて買い物や外食を避け、自宅まで食事を届けてもらう人が増え、リスクを引き受けてくれた配達員の人、また、営業を継続してくれたスーパーの店員などのエッセンシャル・ワーカーへの感謝の念が社会に広がった。
反対に、エッセンシャル・ワーカーは、テレワークで、通勤、オフィス勤務による感染リスクを避けるような「ぜいたく」はできなかったと言える。
サンデル教授は、日常を支えるエッセンシャル・ワーカーのような仕事が、専門性の低いとみなされ、AIやロボットによって置き換えれるという指摘を思い込みだという。高度な技術を人間を代替させるためではなく、専門性の低い労働者の生産性を高めたり、補助したりすることに投資して未来をつくるべきだと語る。
次に、京都大学こころの未来研究センター教授の広井良典さんへの取材記事から。
仕事が他者からの承認や社会への貢献への自負や誇りの感覚とつながることで、幸福をもたらすという点に注目した上で、AIを使った2050年の日本社会の予測によると、今後も社会が持続可能であるためには、以下のような施策が重要だという。
- サテライトオフィスを増やす
- 単一企業に依存しない就業スタイルを普及させる
- チャレンジしやすい環境を整える
この施策により、失業率などの雇用の数値が改善するだけでなく、人々の幸福度も上がるという。
教育が解決策になる?
サンデル教授、広井教授の二人に共通するのは、教育です。
サンデルさんは、大学などに偏った教育への投資を、エッセンシャル・ワーカーである、配管工、電気技師などの尊敬されるべき仕事のスキルを若者たちが学べる場を増やすことを提案する。
一方、広井さんは、人手が不足する職場、人手が余る職場という二極化、雇用のミスマッチに対応するために、「失業者への職業訓練や再就職支援を充実させ、国を挙げて働き手をサポートし、調整する必要がある」と提言する。
米国は、超学歴大国で、大学への進学率が高く、また、大学の学費が有名私立だと年間600万円を超えるというバカ高い状況があり、多くがホワイトカラーなので、現業の仕事である配管工、電気工事技師という生活に密着した仕事に対する投資が必要だということなのでしょう。
一方、広井さんは、日本のホワイトカラー、サラリーマン層の働き方にフォーカスしているように思われます。終身雇用制度の維持が難しくなり、また、長寿化で、「定年後」の15年とか20年の長さをどう生きるのか(働くのか)という状況も関係しているでしょう。
いずれにしても、お二人が主張する通り、一人一人が学びの場を得て、新しい知識と経験の中から、次のステップを踏み出すしか、新しい社会-AIとロボット化-に対応することはできないということですね。
テレワーク、リモートワークを活用すべき
広井教授のAIを使った2050年が持続可能であるための施策にあった、
の3つは、関連性があります。
サテライトオフィスでの勤務により、オフィス勤務から解放され、結果として、自由時間を増やすことで、副業などに取り組む余裕が生まれる。
そして、その副業経験から、独立して働く、フリーエージェント、フリーランスの働き方を選択する、あるいは、起業するというチャレンジをすることができる、ということです。
ポイントは、オフィス勤務で、長時間を拘束されて、自由時間を失い、また、創造的な生き方、働き方ができないという日本のサラリーマンの現状を変えるためには、テレワーク、リモートワークをするしかないということだと思います。
サテライトオフィスは、人と人が触れ合ったり、雑談したりすることで、コミュニケーションを補完し、創造的な成果を生み出すための施策だと思いますが、リモートワークで孤独を感じる(自立心がやや欠けている)日本人には必要なしくみかもしれません。
テレワーク、リモートワークで働くのは、もちろん手段であり、目的ではありません。
より自由な働き方を選択することで、自分が何をすべきか、どういうことをやりたいのかを明確にしないと、長続きしないし、時には苦痛になるかもしれません。
ただ、これだけは言えますが、テレワーク、リモートワークは、「ぜいたく」な働く環境であり、それを維持し、確保しておくのは、今がベストなタイミングであり、先に権利化しておくべきです。
サテライトオフィス構想は、私が、東芝時代の1990年代後半には、一部企業が取り入れて、社会でも話題になりましたが、全然進みませんでした。コロナ禍により、大きな制約が生まれ、その結果、テレワークがこれだけ社会実験された今は、がんばれば、誰もがテレワークという贅沢が手に入る可能性があるのですから、チャレンジしないてはありません。頑張りましょう!